戦国中山王圓鼎を習う(96)「爲人臣之」

《氏以賜之厥命。隹又死辠、及參世、亡不若。以明其悳、庸其工。老貯奔走命。寡人懼其忽然不可得、憚々業々、恐隕社稷之光。氏以寡人許之。又工智施。詒死辠之又若、智爲人臣之宜施。》

《是れを以て之(これ)に厥(そ)の命を賜ふ。死罪有りと雖も、參世に及ぶまで、若(ゆる)さざる亡し。以て其の徳を明らかにし、其の工(功)を庸とす。吾(わ)が老貯、奔走して命を聽かず。寡人、其の忽然として得べからざるを懼れ、憚々業々として、社稷の光を隕(おと)さんことを恐る。是を以て、寡人之を許せり。謀慮皆従ひ、克く工(功)有るは智なり。死罪の若(ゆる)さるる有るを詒(おく)り、人臣爲るの宜(義)を知るなり。》

○「爲」:3回目です。象を操って作業する形から、事を為す意になります。上の部分が手、左に垂れているのが長い鼻です。中山王諸器の兆域図に簡略体が出てきます。

○「人」:10回目です。他の字例と比べると左下に伸びる腕が若干長いようにみえます。

○「臣」:4回目です。この造形を見る度にオーム貝の美しい対数螺旋が目に浮かんできます。

オーム貝

○「之」:18回目です。中山王諸器の中で最も多く出てくる字で、円鼎・方壺・円壺の三器だけでも重文を含めると46例ありますが、その内、円壺での6例中3例が右上から左下に伸びる線が中央の線を貫く形になっています。器ごとに字形表現上の違いがあることを示す事例の一つです。

『中山王□器文字編』(張守中編)「之」

 

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