戦国中山王圓鼎を習う(83)「以明其德」

《氏以賜之厥命。隹又死辠、及參世、亡不若。以明其悳、庸其工。老貯奔走咡命。寡人懼其忽然不可得、憚々業々、恐隕社稷之光。氏以寡人許之。、克又工智旃。詒死辠之又若、智爲人臣之宜旃。》

《是れを以て之(これ)に厥(そ)の命を賜ふ。死罪有りと雖も、參世に及ぶまで、若(ゆる)さざる亡し。以て其の徳を明らかにし、其の工(功)を庸とす。(わ)が老貯、奔走して命を聽かず。寡人、其の忽然として得べからざるを懼れ、憚々業々として、社稷の光を隕(おと)さんことを恐る。是を以て、寡人之を許せり。謀慮皆従ひ、克く工(功)有るは智なり。死罪の若(ゆる)さるる有るを詒(おく)り、人臣爲るの宜(義)を知るなり。》

○「ム・」(以):7回目です。下の弧の部分は、右側の方を左側よりもやや立てるようにしてから最後に折り返します。

○「明」:偏の「日」は太陽ではなく窓の形で、「明」は月光が窓に差し込む様をあらわした字です。旧字体の「朙」が窓の形を残していますが、甲骨文では窓の形は一様ではなく数種のパターンを確認できます。[古文字類篇](高明ほか編)の「明」のところを参照するとわかりやすいと思いますので下に載せておきます。なお、中山三器にある4例のうち、月の第一画が水平にしているのは今回の字例のみです。他は右上がりにしています。窓の形としては「」をしばしば目にすると思われますが、実は甲骨文の段階では他にも「口・日・田・」などが使われていました。中山篆「明」の形は[説文]の古文と分類された字形につながっています。

[古文字類篇]高明 他
「明」

○「其」:10回目となります。上の部分が竹などで編んだ箕の形で「箕」の初文です。代名詞や副詞に使われるようになり竹冠が加えられました。箕というと穀物の余分なものを払うためのちり取り状の道具を連想しますが、字形から考えるともっと深い籠のようなものである可能性があります。

○「悳」(德):4回目です。「直」と「心」からなり、「ただす・ただしい」の意を持ちます。「直」は「省」と隔てる意の「乚」(いん)による構成。「省」は投稿(40)において「悳省」の語が出ていましたので、そちらも参照してください。「省」の構成素である「生」(少ではない)が「直」そして「悳」と次第に簡略化していくのがわかります。また、巡察の場合には行人偏がつき「德」となりますが、おそらく同字だと考えられます。なお、中山三器では「悳」字は全部で6例。拓影をみると、この字例のみ「直」の部分が若干右に寄っています。ここではそれを修正して書きました。