戦国中山王圓鼎を習う(50)「而難行施」

社禝其庶虖。厥業才(在)祗。寡人聞之。事少(小子)女長、事愚女智。此易言、而難行施。非恁與忠、其隹能之。其隹能之。隹(吾)老貯(賙)、是克行之。》

社稷 其れ庶(ちか)き虖(か)。厥(そ)の業は祗(つつ)しむに在り。寡人之(これ)を聞けり。少(小子)に事(つか)ふること長の如く、愚に事ふること智の如しと。此れ言ひ易くして行ひ難きなり。信と忠とに非ずんば、其れ誰か之を能くせむ。其れ誰か之を能くせむ。唯だ□(吾)が老貯のみ、是れ克く之を行ふ。》

「而」:3回目です。中山の3器には13の字例があります。その中には最上部に1画増やすものとそうでないものとの2つのパターンが見られ、この例のように増画するものは4例となります。中央の2脚は付け根で引き締め、伸びやかで直線的に書きます。

「難」:「」(かん)と「隹」(すい)からなります。「」は「難」の字解の中で「金文の字形によると鏑矢(かぶらや)の形と火に従っており、火矢の形かとみられ、火矢を以て隹(鳥)をとる法を示す字かと思われる」としていますが、「堇」(きん)の字解では「字はに従う。は焚巫(ふんぷ・巫女を燓くこと)の象」としていて断定には至っていないようです。この字の拓影を見ると、やや膨満ぎみなので少し幅を抑えながら書くことをおすすめします。

「行」:2度目です。人や物が行き交う交差点の形です。左右対称になるように注意して書きます。

「施」:やはり2度目です。前述したように「旃」の字をあてている研究者もいますが、字形は「施」(せ・し・い)であり、同一の声系である「也」の意で使われています。逆に「施」の意で用いているものが「阤」で、方壺に出てくる字です。なお、[字通」ではこれを「旃」として扱い、「施」の金文体として「阤」字を扱っているのですが、ここにある字形を採用すべきと考えます。さて、前回のものは上下の縦画の位置をほぼ揃えていましたが、7例あるうち、揃えるか近いものが3例、4例はこの例の様に少し右にずらして書いています。できるだけ縦画を中心線上に揃えて書く方が美しい姿になると思います。

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