戦国中山王圓鼎を習う(33)「智(知)社禝(稷)之」

「智」:初形は矢(し)+干(かん)+口(さい)。神の前でおこなう誓約のときに用いる聖器である矢、干(盾)、口(祝詞を入れる器)を並べた形です。後に誓約が収められた器「曰」(えつ)がさらに加わりました。ここでは「知」の意で用いています。字形全体が寸胴になることを避けるため、「干」の位置を少し上にあげています。

「社」:祭卓と土に樹を植えている形からなります。神の住む大地としての「社」(やしろ)に聖樹を植えて祀る様です。この字形は説文に古文として扱われています。示偏を強調し、「土」の肥点は小さく収めます。

「禝」:禾偏の「稷」は田の神、農耕の神で、地の神である「社」とあわせた「社稷」(しゃしょく)は国家のことを指すことがあります。この場合は祭卓の示偏となっていますが、その「社稷」のことです。ちなみに、「畟」(しょく)は田形の頭をした神の姿です。(耜の形である厶を頭にした神は「夋」)ところで、旁の下に「女」形があります。「允」の金文に同様の足の部分を「女」にしたものが認められます。それと関連があるか、あるいは足の形「夊」(すい)が変化したものなのか、気になるところです。なお、「田」を頭として用いる場合は上に角を出すことがあります。

「之」:4回目となります。足跡の形「止」と「一」からなります。足が境界から進むことを表しています。「止」は下を弧のようにして書くのに対して、「之」は直線で、左に伸びないように書きます。