戦国中山王圓鼎を習う(52)「其隹(誰)能之、其隹(誰)能之」

社禝其庶虖。厥業才(在)祗。寡人聞之。事少(小子)女長、事愚女智。此易言、而難行施非恁與忠其隹能之。其隹能之。隹(吾)老貯(賙)、是克行之。》

社稷 其れ庶(ちか)き虖(か)。厥(そ)の業は祗(つつ)しむに在り。寡人之(これ)を聞けり。少(小子)に事(つか)ふること長の如く、愚に事ふること智の如しと。此れ言ひ易くして行ひ難きなり。信と忠とに非ずんば、其れ誰か之を能くせむ。其れ誰か之を能くせむ。唯だ□(吾)が老貯のみ、是れ克く之を行ふ。》

「其」:6回目になります。「其誰能之」が繰り返されるところです。繰り返しの記号である重文号「゠」は右下に小さめに添えて書きます。

「隹」:「隹」字として4回目です。これまでは「唯」の意で使われていましたが、今回は「誰」の通仮字です。羽を表す横画が分間等しく水平に整うように書きます。中山国の篆書では、右下が空いている場合は重文号を上に寄せて書きます。

「能」:[説文]には熊に似た獣の象としていますが、[字通]では「水中の昆虫の形に象る」としています。金文の形は左右それぞれの部分がつながっていますが、これは別個のものとして配置しています。2つの肥点は装飾画です。

「之」:7回目です。左の2画は、中山三器にみられる45例を通観すると、ほぼ真上から降ろすようにして書くことが多い様です。