「亡彊(疆)」 疆り亡からんことを。
「亡」:3回目です。拓によっては縦画に肥点があるように見えるものがありますが、他の字例ではほぼ全て肥点がないといえます。造形的には中山篆特有の表現に通じて違和感はないのですが、器面の接写画像によると、明確に存在が確認できるかどうかは微妙といったところです。ここでは「なし」の義となります。
「彊」:2回目です。「かぎり・さかい」の意の場合は「疆」とするべきですが、共に境界の意として、(70)では「土」が旁の下に付け加えられているのに対し、(84)では「強」の意になる「土」を略した「彊」にしています。これも中山篆の選字の際にみられる音通による鷹揚性でしょうか。
中山方壺銘文考観(完)