戦国中山王方壺を習う(92)

「卽(得)民(故)   即ち民を得。故に

「卽」:中山諸器では唯一の字例。「即」の旧字で、盛食の器である「皀」(キュウ)と人が坐す形「卩」(セツ)からなる字です。席に即き、今まさに食事を始めようとする象です。ここでは「卩」の下に横画を加えていますが、それを含む「卲」や「卿」などには加えておらず、この「即」と「節」のみにみられるもので、偏旁それぞれの脚が交錯する状況を回避する意匠と思われます。なお、[説文]の「垐」(シ・ジ・ショク・ゾク)の條に古文として「卽」と「土」に従う字があることを理由に、この字を「次」として解す説がありますが、白川静氏をはじめとする諸賢の釈の通り、ここは素直に「すなわち」としてよいと思います。

」(得):3回目です。

「民」:目を刺して失明させる象です。郭沫若氏は奴隷であるとしています。方壺に3例ある他、円壺の1例は目の中に2点加え、さらに肥点は左右に開く形に変えた形となっています。

」(故):3回目です。