戦国中山王方壺を習う(69)

「忨(願)(從)在大夫   願わくは、従いて大夫に在り。

「忨」(願):2回目です。音通によって「願」(ねがう)の意となります。ただ、相国(宰相)であった貯が一介の大夫となって従軍する覚悟を謙虚と捉えれば「つつしむ」意をもつ「愿」に通仮するとの説もあり得ることかと思います。

」(從):「从」(ジュウ)は側身形で左向きの2者を列べて前者に従うさまを表す字です。随行して従う場合もあって「辵」(チャク)が付きますが、すでに西周金文から「彳」(テキ)や「止」のみに省略する例が存在します。ここでは秩序を乱した燕国を撃つために従軍する意となります。

「在」:2回目です。

「大夫」:「夫」に付く繰り返し記号(重文号)の位置が下ではなく、中央にあるのは「夫」の構成素となっている「大」を繰り返すことを示しています。つまり、ここでは「大夫」となり、重文号を用いた合文とするわけです。大夫は君主国家を支える支配階級にある貴族の身分呼称で、相国(宰相)である貯が、将軍ではなく、一介の大夫になったつもりで従軍する意志を表した部分となります。読みとしては「願わくは、大夫に在りて従わん」でもよいのかと思います。

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