戦国中山王圓鼎を習う(53)「隹(唯)吾老貯」

社禝其庶虖。厥業才(在)祗。寡人聞之。事少(小子)女長、事愚女智。此易言、而難行施非恁與忠其隹能之。其隹能之。隹(吾)老貯(賙)、是克行之。》

社稷 其れ庶(ちか)き虖(か)。厥(そ)の業は祗(つつ)しむに在り。寡人之(これ)を聞けり。少(小子)に事(つか)ふること長の如く、愚に事ふること智の如しと。此れ言ひ易くして行ひ難きなり。信と忠とに非ずんば、其れ誰か之を能くせむ。其れ誰か之を能くせむ。唯だ□(吾)が老貯のみ、是れ克く之を行ふ。》

「隹」(唯):3字前に出てきたものは「誰」として用いられていましたが、これは「唯」の意で用いる4つ目の字例です。羽を横切る弧が他の例よりも長めになっているようです。

」(吾):2回目となります。「吾」の仮借字として用いられています。虎頭の部分をコンパクトに収め、「魚」を伸びやかに書きます。下の部分は「火」のように見えますが、臀鰭(しりびれ)や尾鰭(おびれ)などの象です。

「老」:長髪の人の側身形である「耂」(おいがしら)と人が死して伏す形(または倒形)で「化」の初文である「匕」(か)からなります。「耂」を含む字としては既に「考」が出ています。

「貯」:中山国の相であった人物の名として出てきます。強国に囲まれ生き残りに腐心していた中山国の王がその命運を托した人物ですが、やがて背臣となります。それを密かに懼れていた王が釘をさすように銘に刻んで鋳造したのがこの円壺です。この字の特定については諸説あります。諸賢はこれを「賙」(しゅう)や「賈」(か)などの説を出してきましたが、過日、浅学を懼れず私見を認めました。ご興味のあるかたはHPのメニューから「中山篆書法篆刻学術報告交流会」をご覧いただければ幸いです。

 

 

 

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