戦国中山王方壺を習う(96)

「人(親)(作)(斂)   (賢)人は親しみ、作斂(中なれば)

「人」:5回目です。

」(親):「宀」(ベン)と「辛」、「木」、「斤」とからなります。祭祀用の神木を入山して新たに伐る際には、修祓として矢を射ったり、辛(針)を打ったりします。同声によって「親」に通仮させています。「辛」の第一画の横画について、円鼎の字例では入れていますが、この方壺では省いています。

」(作):「乍」(サク)は「作」の初文。垣などを作るため木を撓める形で、土木工事の他、大きな事を為す意に用います。ここで「又」(手)を加えているのは徭役(ヨウエキ えだち)であることを暗示させます。同じ「作」でも円鼎では「鼎を作る」の表現には「言+乍」の形にしており、意によって字形構成を変えるというこだわりを感じます。

」(斂):「おさめる」意の「斂」(レン)と祝祷の器に神からの啓示が下された象である「曰」(エツ)とからなります。「僉」(セン)は礼冠をかぶった二人がそれぞれ祝祷の器を奉じ祝祷に臨む様とされています。人の側身形の脇に添えられた3画は、金文、楚簡での他の字例には認められないもので、中山篆独特の造形に配慮した修飾表現と思われます。また、礼冠をかぶっているとする部分には異説もあると思います。ここは租税の意で、「作斂」は徭役と租税を指しています。