戦国中山王方壺を習う(70)

「ム(以)請(靖)郾(燕)疆   以て燕との疆を靖んぜんと。

「ム」(以):10回目です。

「請」(靖):声符は「青」で「靖」に通仮して、「やすんずる・しずめる」意となります。この字は中山篆で一例のみです。旁が下がっておりやや佇まいが悪い気がします。

「郾」(燕):4回目です。旁の脚部下は拓影では明瞭ではありませんが、接写画像では長く伸びていることが確認できます。

「疆」:耕作地である田の境界や畦(あぜ)の意がある字で、「畺」(キョウ)が初文です。ここでは中山国と隣国燕との境界のことを指しています。弓は距離を測定し定める際に用いるもの。土地神である「土」を加えた「疆」(キョウ)が正字とされますが、金文ではこの「土」を略す例が多く、「強」の異体字「彊」と紛らわしい関係です。事実、中山諸器でみられる5例は「強」とは異なって「境界・区域・かぎり」の意で用いているものの、「土」を入れたものはこの場合の1例のみで、他はすべて略した字形になっています。