戦国中山王方壺を習う(30)

(信)施(也)而(專)」  (忠)信なることを(知る)也而して専ら

」(信):「信」と通仮する字です。また、中山篆では「亻」や「骨」を「身」に替えることがあります。「身」の右上の弧の一部は渦紋の省形で、渦紋にする「身」もあります。

「施」:吹き流しがついている旗の形「」と「也」からなっています。「也」は匜(い)とよばれる水器の形で、その匜の初文とされていますが、虫形のようにもみえます。ちなみに、「」と似た要素を持つ「於」は旗とは無縁で羽根を広げた姿を曝した鳥の屍体です。

「而」:頭髪を切った姿、もしくは顎髭(あごひげ)の形。《字通》によれば「頭髪を切って、結髪をしない人の正面形。雨乞いをするときの巫女(ふじょ)の姿で、需とは雨を需(もと)め、需(ま)つことを示す字で、雨と、巫女の形である而とに従う。濡・儒はその系統の字である」とあります。ちなみに頭髪を切り落とした側身形は「兀」(ゴツ)です。

」(專):ここでは「專」(もっぱら)の意となります。文献にはみられない字で諸賢はこれに「」の形をあてていますが、右端は接写画像をみても「」であって、「專」とするには縦画が足りません。「田」が「日」に譌変しているようです。