戦国中山王方壺を習う(25)

[(衡)其又(有)忨」   (天)其の忨あるに衡(抗)わず

」(衡):字形は「ク・日・矢」から構成されていますが、もともと上は「角」で下は「大」であると推定され、「衡」の省形と思われます。「衡」は牛の角木(つのぎ)で、角が人を傷つけるのを防ぐために両角を横に渡した木で結ぶもの。「横」は「縦」を順とすれば逆にあたり、音のコウは「抗」にも通じます。これらのことから「衡」は「違抗」(抵抗する・逆らう)や「拂逆」(悖る)の意を持つと考えられます。一方、白川静氏や小南一郎氏はこの字を「斁」(エキ)で「厭う」意としていますが、「斁」の字は同じ方壺の中に別の形で使われていますので、これを「斁」とするのは無理があるように思えます。よってこれを「衡」、また「抗」にも通じて「もとる・さからう」意であるとします。

「其」:「箕」(み)の初文です。其が代名詞や副詞に用いられるようになり、「箕」が作られました。

「又」(有):2回目です。

「忨」:音はガン、貪るさま・欲深く望むこと、そのような願いをさします。これを諸賢は「願」を通仮させていますが、「忨」のままでも良い気がします。偏旁をこのような配置構成にするのは珍しいといえます。