戦国中山王圓鼎を習う(54)「是克行之」

社禝其庶虖。厥業才(在)祗。寡人聞之。事少(小子)女長、事愚女智。此易言、而難行施非恁與忠其隹能之。其隹能之。隹(吾)老貯(賙)、是克行之。》

社稷 其れ庶(ちか)き虖(か)。厥(そ)の業は祗(つつ)しむに在り。寡人之(これ)を聞けり。少(小子)に事(つか)ふること長の如く、愚に事ふること智の如しと。此れ言ひ易くして行ひ難きなり。信と忠とに非ずんば、其れ誰か之を能くせむ。其れ誰か之を能くせむ。唯だ吾が老貯のみ、是れ克く之を行ふ。

「是」:「早」が匙(さじ)、下の「止」(し)の部分は声符と同時に匙の柄の部分を表わすと思われます。「是」について、[字通]は「匙(さじ)の形で、匙(し)の初文。のち是非の意や代名詞などに用いられ、その原義を示す字として匙が作られた。匙は是の形声字である」としています。「早」の部分は縦方向に詰め、「止」を伸びやかにして書きます。

「尅」(克):3回目です。[字通]ではこの字を「皮」の字例に載せているのですが、白川静は[続 金文集]で「克」としていますので、おそらくそれは誤植だと思われます。ただ、確かに「皮」は曲刀を以て皮を剥ぐ様であり、字形を構成する要素は共通しているように思えます。しかしながら、中山三器では「皮」の字として上部が「廿」形に入れ替わった「」が登場しますので、「皮」ではなく「克」の異体字として良いと思います。曲刀の刃の部分にあたる左に垂れる画は、他の例に合わせてあまり斜めにしない方が良い気がします。

「行」:3回目の登場です。やや下の部分に対して上の幅が広くなっているようなので、修正して書いてみました。

「之」:8回目です。最後の横画の始筆は左の縦画の位置に揃えて書きます。