戦国中山王圓鼎を習う(14)「勿矣猷粯」

「勿」:字通では、「弓体に呪飾をつけた形。その字の初形は、弓弦の部分を断続したもので、弾弦の象を示すものかと思われる。すなわち弾がい(祟りをもたらす獣を撃って邪霊を追い出す儀式)を行う意で、これによって邪悪を祓うものであるから、禁止の意となる。」としています。また、説文は氏族標識の旗を表すとしているのに対し、「卜文の字形は弓体を主とする形にみえ、金文の字形は、耒(すき)で土を撥(は)ねる形に作り、字形に異同がある。」としています。第1画は天上より垂直におろすようにして書きます。

「矣」:厶(し)と矢からなるとされています。厶の初形は耜(すき)の旁の部分(し)で耜の初文。耜に矢を加えて清め祓う意です。しかし、耜をあらわす厶(し)の部分は、二つのものがまとわる様である「丩」(きょう)の形と同じにしています。ちなみに、「句」の「勹」(ほう)の部分は人が身をかがめている象とされているのですが、甲骨、金文の字形を見る限り二つのものがからみまとわる形で、「丩」と同形であるように思えます。

「猷」:猷は声符の酋(しゅう・ゆう 酒樽の上に酒気が出る様)に犬牲をそえた形で、神を祀り、神意に謀(はか)る意です。偏旁から構成されますので、脚を持つ旁を伸ばし、偏の下を空けます。

「粯」:米と見からなる字ですが、「迷」の意で用いられています。くらむ意を持つ「眯」(べい)の異体字とみる見解もあります。これも偏旁からなる字です。「米」の縦画を強調する判断をしています。「見」の脚を強調するとどうなるか試されると良いと思います。