戦国中山王圓鼎を習う(6)「人聞之蒦」

隹十四年、中山王作鼑。于銘曰、於虖、語不(發)哉。寡人聞之。蒦(與)其汋(溺)於人施、寧汋於淵。》

隹(こ)れ、十四年、中山王□(せき)、鼎を作る。銘に曰く、於虖(ああ)、語も□(悖・もとら)ざる哉(かな)。寡人之を聞けり。其の人に汋(おぼ)れんよりは、寧ろ淵に汋れよと。》

「人」:人の側身形です。まさに人偏の形をみることができます。筆順は甲骨文は最初に頭から腕、次に首から胴体および足とするのが多く、金文になると頭から胴体および足を最初にするものが多くなります。字形は、腕の先端より下の脚を長くします。

「聞」:甲骨文は跪いた人の側身形の耳を大きく強調した形です。聞は戦国期に至ってみえる字、声符である門は神廟の扉で、そこにおいて耳を傾け「神の音ずれ(訪れ)」を聞く意です。中山国の篆書は説文の重文にもありますが、「耳」と「昏」に従っています。この小刀で肉を切り分ける形である「昏」には古い字形に酒器である「爵」を含むものがあり、神の訪れの兆候を聞き取る儀式に関係しているのではないかと言われています。偏旁からなる字ですから、片方(この場合は旁)をすこし詰めて下部に空間を残します。

「之」:境界から一歩足を踏み出す形です。横画の上の部分は「止」で足跡の形で、左右相称に上下に配したものが「歩」となります。「歩」は「止」と「少」からなるのではありません。字形は、上部をスラリと伸びやかに書き、左2本の縦画の間隔を次第に狭くするように運筆します。

「蒦」:冠毛がある鳥を表す「雈」(かん)に又(手)を加えた、鳥占(とりうら)の意です。「蒦」には「こ」の音があって、それは「與」と近いことから「與」の意で用いられています。冠と隹と又の密な組み合わせですから、隹の横画の分間を詰めることが必要です。