「淵」:旁部が声符の(えん)。説文に「回(めぐ)る水なり」とあり、旁部は水の回流する形で、淵の初文です。「淵」は水の流れが複雑に交錯する様であるのに対し、崖の下から水が一方向に流れ落ちる場合が「泉」です。金文の字形では、これを上下対称にしたものが「淵」となっています。水流の一画に渦を巻く表現は「壽」に含まれる「疇」と似ています。
「昔」:肉を薄く切って陽に晒し乾肉を作っている様です。甲骨文や金文では肉が乾燥してしわしわになり波打っている姿で、2~3枚が重なるように並べられています。下の部分は「田」に変わっていますが、本来「日」で乾燥するまでの時間の経過を暗示させるものです。
「者」:木の枝を交叉させたものと土で祝祷を収めた器を覆う形。居住地の周りに外部からの邪霊の侵入を防ぐために土中に埋めるものです。そのようにして守られた邑が「都」です。中山国の篆書は「止」の形に変化しています。
「郾」:「燕」は周から春秋、戦国と命脈を保った国で、金文では音通により「郾」の字形を使っています。「郾」の偏部は、秘匿の場所において女子に魂振り(神気によって霊魂の活力を高めるための儀式)を行う様で、「晏」と同系の文字。中山国の篆書では、円鼎や方壺では玉(日)部を変化させて「日」には見えませんが、胤嗣円壺では「日」の形をとどめています。