戦国中山王方壺を習う(13)

[昭察皇功]   皇功を昭察す

 

[卲](昭):卲(ショウ)は昭の古字。神の降り到ることを拝して求め、そして迎える形。字訓は「あきらか・あらわす・かがやく」など。「昭」の字形は戦国期羌鐘(ひょうきょうしょう)に、「卲」の字形に「日」が加わった姿で登場し、その後は「卩」を省いたものが定着していきます。

」(察):この字を何の字に通仮させているかについてはいくつもの説があります。一つ目は「跋」とする説。「」(フツ・ハツ)の略体と捉えて跋文の「跋」(バツ)に通じるとし、「留め記す」と解するものです。しかし、犬の耳がなく、去勢の画が湾曲しすぎている点が気になります。二つ目は、「肆」(シ)とする説。「肆」はもと「」と書く字で、「ころす、つらねる、ならう、おさめる、くるしむ、ながいえだ、えださき、あまる、しらべる」などの意をもちます。この字が含む「隶」(タイ)の字形は蔡・祟・殺・(テイ)に共通するもので、たたりをもたらす獣を殺して敵の呪いを防ぐ呪儀をあらわしています。また、これと似たものに「求」もあります。これらと比べると尾毛の部分が一画少ないものの、確かに字形からすれば近似しているといえます。白川静氏もこの一系の「蔡」の字形とみて「察」説をとり、音通によって「察」の通仮字としています。これが3つ目の説です。「察」には「つまびらかにする」意があり、「皇功を昭察す」と、文脈にも適うように思われます。4つ目は、「豕」(タク)の古文「」が似ているとして「琢」、つまり琱琢(チョウタク)で削り刻す意であろうとするものです。これは小南一郎氏が呈示している説です。張守中氏の《中山王器文字編》を参照すると、当該字は「蔡」「」(肆)とは同系とすることを避け、「」のままにしています。諸説紛々。いずれも裏付けとしては決定的な証左に欠けますが、ここでは「察」説に従うこととしました。

「皇」:王の象徴である鉞の上部に玉飾りがついている形です。

「工」(功):「工」には巫祝、楽人、神につかえる者、たくみ、工作者、作る、つかさ、役人、てがら、業績などの意があって「功」に通用します。上下を少し詰めて書きます。

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