1月7日の投稿に続き「執大象」をテーマとする作品です。

前回は戦国中期の《郭店楚簡》に倣った書作品をご紹介しましたが、今回は楷書の作品と篆刻2貌のご高覧をお願いいたします。

楷書作品。これは伊藤伸先生の遺風を回想しながら書いたものです。伊藤先生は西川寧門下にあって将来を嘱望された天才。西川門下の系流の後継と目されていただけに、不慮の怪我による夭折は書道界の大きな損失でした。わが栃木県の出身である先生が県下随一の進学校である宇都宮高校に通っていたころ、志高一念発起して西川寧の門を敲いたと聞いています。その宇都宮高校で書道教師として最後の教鞭をとった私にとっても、どこか惹きつけられる大きな存在となっていました。高校教師となったばかりの頃は、伊藤先生が指導された筑波大学での開放講座に通い、直にご指導をいただいたこともあり、今では懐かしく貴重な思い出となっています。

書のダンディズムといえば、青山杉雨先生を思い浮かべる方が多いと思いますが、私は既に伊藤伸先生が実践されていた気がします。その伊藤先生がとりわけ精通していた北魏書の世界。西川寧とはまた別の、繊細で知的な感性を髣髴とする展開。是非、これからの書壇に受け継がれていくことを願っています。

執大象(書)
35㎝×75㎝

執大象(甲骨)
38㎜×39㎜
執大象(郭店楚簡)
56㎜×54㎜