戦国中山王方壺を習う(7)

[可灋可尚]   灋(のり)あるべく尚(つね)あるべからしめ

「可」:木の枝をあらわす(カ)と祝祷の器(サイ)とからなる字。木の枝によって祝祷の器を殴ち、神に承諾を促す様をあらわしています。は一体のものなので、本来であれば筆順は連続されるべきものと思います。

「灋」:「所」を参照すれば明らかですが、中山篆の場合は他の字例と異なり廟扉である「戸」にしたがっている点が特徴的です。一般的な字例の場合、《字通》には「法の正字は灋に作り、水+廌(たい)+去(きよ)。廌は神判に用いる神羊で獬廌(かいたい)、また獬豸(かいち)とよばれる獣の形。去は大+(きよ)の会意字で、大は人、は獄訟のとき自己詛盟した盟誓の器の、蓋(ふた)をとり去った形。敗訴者の盟誓は、虚偽として蓋をとり去って無効とされ、その人(大)と、また獬廌もともに水に投棄され、すべて廃される。金文に「朕(わ)が命を灋(はい)(廃)すること勿(なか)れ」のように、灋を廃の意に用いる。法はその廌を省いた簡略字である」とあります。ただ、去が大(人の正面形)ととからなるという部分については、確かに甲骨文にはその字例もあり、戦国秦の法治富国強兵を行った商鞅の青銅器「方升」や楚簡、秦簡などにしばしばみられるものの、西周の青銅諸器の字形はが多くみられることも事実です。「廌」部の左、巻き上げるような線によって密を尽くす部分はあまりにも繊細なために拓影に反映されない場合がありますので拓の選択には注意が必要です。

「可」:2回目です。

「尚」:廟屋に祝祷の器を置いた形「向」とそこに神気が顕れる様の「八」とからなる字です。「向」は家や宇、安などと同様に、廟屋をあらわすウ冠からなる構造です。なお、神気「八」の下にある小さな画は、こしきから湯気が立ち上る様「曾」(ソウ)の字形にもみられるものです。

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