「襲明大道」(大道を襲明す)『老子』河上公注より

老荘思想や道教の始祖として知られる老子は、春秋時代の哲学者です。しかし、生卒年は不詳であり、彼が遺したとされ、5千数百字に及ぶ『老子(道徳経)』の成立や内容についても、神格化が進んだために謎が多く、漢の河上公(かじょうこう・この人物も詳細不明)や魏の王弼(おうひつ)によるものをはじめとする多くの注釈書が生まれています。

実際に書写された最古の出土資料としては、1993年に郭店一号楚墓から出土した残簡(郭店楚簡)があり、他には1973年に馬王堆漢墓から出土した2種類の帛書(『老子帛書』甲・乙)が知られています。

「襲」は即位儀礼の際に重ね着として羽織る衣装(袞衣(こんえ、こんい))で龍の紋様が施されているもの。「かさねる・つぐ・おそう・きる」などの義を持っています。「襲」の字形は衣の上部に「龍」の省形が並んでいて、あでやかで荘厳な刺繍を髣髴とさせます。「襲明」は明を襲ぐ。絶対的な知識・智慧を受け継ぐこと。「大道」は『老子』十八に「大道廢(すた)れて仁義有り。智慧出でて大僞有り。六親和せずして孝慈有り。國家昏亂して忠臣有り」とあります。

「襲明大道」とは、大道を襲明すと読み、大いなる道を修め、絶対的な知を承け継ぐ意となります。

「襲明大道」
60㎜×58㎜

「襲明」
38㎜×17㎜
明朝嘉靖帝の袞衣