「(愛)深則孯(賢)」 (寵)愛 深ければ則ち賢(人は親しみ)
「」(愛):後ろを顧みて振り返る形「旡」(キ)と「心」からなり、心をかけ慈しむ意の字です。(ただし、楚簡や古璽には左向きのものが散見され、円壺にある字例も簡略体ですが左向きです。)この字は戦国期を遡る古い字形が見当たりません。小篆では下に足の形「夊」(スイ)が入りますが、楚簡にはないようです。なお、現在の「愛」の形は漢以降の譌変によるもの。右に垂下した線は修飾画と考えてよいと思います。
「深」:中山諸器では唯一の字例です。声符「穼」(シン)の初文である「」は[説文]で火をもって穴の中を探る象とされ、水中の深さを探り測るのが「深」となります。しかし、この中山篆の「深」において、「穴」の中の「水」を除いた部分を「火」と採るには形状に無理があるように思えます。これは方壺中の「述」に含む「朮」(ジュツ)と同じもので、祟りをもたらす獣、あるいは土中に棲む「おけら・もぐら」の類であって、手を強調し、穴の中の土を手で掻いて探る象であると思われます。ちなみに「述」の「朮」にある上部の2点は、掻きだした土と思われますが、甲骨文の「朮」はこの中山篆「深」の「」のように2点を略していることもその傍証となります。
「則」:5回目です。方壺の6例のうち、旁の「刀」を「刃」にするものが1例だけあります。
「孯」(賢):6回目です。