戦国中山王方壺を習う(5)

[鑄爲彝壺] 鋳て彝壺を為(つく)る

「鑄」:中山篆は「金」と「寸」とからなる字形となっています。「寸」が「チュウ」の音を持つことについて、白川静はおそらく「丑」の省形だろうとしていますが、少々無理があるように思えます。「壽」の字形は、西周中期以降になって、下部に「又」(手)が加わるようになりますが、その「又」を残した省形の可能性があるように思えます。この「金+寸」の字形は「壽」を構成素に含む他の一般的な系統とは一線を画すものです。ただ、戦国三晋(晋から分離した趙・魏・韓)の魏国の文字と構成が共通していることが《金文編》で確かめることができます。 ※下に関連資料を添えておきます。

「爲」:右脇の本来渦紋とすべきところが簡略化されています。方壺のもう一つの字例は渦紋ですし、他の中山三器もすべて渦紋なのですが、唯一この字だけが例外となっています。接写画像を確認しても器面の傷などではなさそうです。

「彝」:この字形も、一般的な金文とは異なります。左の羽根を思わせる姿は説文古文の字形に近いものです。右上の糸形は羽交い締めを固定するための糸ですが、羽根から離れてしまったために、この字形からは、本来の鶏を羽交い締めにする様は想像ができません。

「壺」:壺の器と蓋を合わせた全形です。壺の字は中山三器では方壺のみ2例登場します。

《鋳に関する資料》

商周青銅器銘文選
金文編