春秋晩期「者■(三水+刀)鐘」を学ぶ  臨書および篆刻3顆 (3)

前回少し触れましたが、13器現存するこの編鐘には92字(重文1を含むと93)の銘文が、15字から25字までが12器、42字のものが1器に分鋳されています。もっとも多いものが他の器から突出していることは、もともとはこの編鐘にまだ別の器があったのではないかということを想像させます。

この春秋晩期(戦国早期とも)越の「者とう(三水+刀)鐘」(※「とう」は異説あり)を収録しているものとしては、羅振玉の『三代吉金文存』、馬承源の主編による『商周青銅器銘文選』、中華書局発行の『殷周金文集成(修訂増補本)』などが拙齋にあります。それらの中では、やはり現存する13器をすべて網羅していること、各器について字数や個人蔵の名前を明らかにしている点など詳細情報を具している点に於いて、『殷周金文集成(修訂増補本)』に勝るものはありません。『三代吉金文存』には4器、わずか2器載せるのみの『商周青銅器銘文選』などは全数を12器としています。なお、『殷周金文集成(修訂増補本)』には「者とう(三水+刀)鐘」とは別に同系の「者とう鎛」が1器収載されていて字形表現上の揺らぎを確認することができます。

金石資料をもとに作品制作する場合は、同字について少なくとも数例にわたって表現上の揺らぎの幅を確認し、俗に墜ちないよう、かつより完成美に近い姿を求め、その許容範囲において意匠を膨らますことが大切だと考えています。

殷周金文集成
「そん(孫+心)學」 学にしたがう
55㎜×55㎜