雅印『翠龍』のご紹介

ご依頼により制作した雅印をご紹介します。印文は雅号『翠龍』です。

書体は楚簡風でとのご希望です。「翠」には金石の古い字例がありませんが、戦国期楚系の簡帛にまとまった字例がみとめられます。「翠」はみどり、カワセミの意を持つ字ですが、下部にある声符の「卒」は、本来「死卒」つまり死者の衣の意で、死者の霊が迷い出ないように衣襟を合わせ閉じる姿です。

この「卒」は楚簡では衣の上に手を添えているものがありますが、「翠」になると、その手の形が「首」、「自」、「目」などに訛変(誤って変わってしまうこと)してしまうことがわかります。さらに「衣」の部分も「辛」に近い形に大きく変化してしまいます。しかし、それでもよく見れば「衣襟」を合わせた本来の形がうっすらと浮かびます。

これらの基本を踏まえて印稿・奏刀と進みます。翠龍先生にはご承諾をいただきましたのでここに印影をご紹介いたします。ご覧ください。

翠龍(2.4 × 2.4)